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枯香睡蓮

まだ浅い時間、 窓の向こうに絡みあう木々の線と線は黒い影に濡れている。 鞄のポケットから破れた薄い半紙に包んだままの睡蓮を取りだして、 紅一輪、生温かい湯に息をほどく。 喉に淡くまどろみ、体の中へするすると流れる、巡る花の湯。 二日前に届けてくださった睡蓮が、 時知れず夢から覚めたように、ぼんやりと開き始めていた。 枯香睡蓮、 からだを温めて暗がりの奥深くヘまた眠りに誘なう、果てた心の隙間、 ひととき。 謝謝


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